Sustainability research 17

1990年代半ば、日本の会議の来られた頃は、
自動車業界の人はどうして心理学的な面を考えなかったでしょうか?

写真

Montreux / Switzerland

非常に不思議に思いました。
自動車の開発は技術的な挑戦であり、技術はどんどん発展して、エンジニアも技術の発展に貢献しているわけですが、日常の中の日常的な見ることや、知覚するということに関する詳しい知識は持っていないわけです。
脳というのはどのように機能しているのかということ、その中に意味があるのです。
クルマの中にミラーがありますが、日本とドイツでは位置が左右違いますが、ミラーは命に関わる大きな問題です。
少なくとも、ミラーを見てから視線を戻すまでに1秒はかかるので、最低2秒間は視線が前方から離れてしまっているわけです。
これは密な交通状況では非常に大きな問題です。

クルマに乗った時に、どうしてこんなデザインになっているのか疑問に感じたり、こんな簡単なことなのにとか、ドライブデザイン、操作性のデザインで疑問に感じることはありますか?

それはいつも感じます。私はテクノロジー大好き人間ですが、まずクルマに乗ると、それまでとは違った世界に入るわけです。
まずCDを入れます。私は講義の前にCDを聴きます。
私はたとえばクルマでベルンへ行く時にも、自分の講義や小説をCDで聴いたりするのですけれど、先程も言ったようにクルマは人や物を運ぶだけではなく、生活の空間なのです。
私は常にコントロールをしている状況でありたいと思います。
何かの技術に適応、順応しなければならないのではなく、自分がコントロールしていたいのです。

BMWのある上層部の方が「人間は技術に順応しなければならない」と言いましたが、私はそうではないと思います。
私は自分のクルマの安全性、快適性のために、クルマによって急に自分が理解出来なくなる驚きをなくしてほしいのです。
今新しいクルマは、駆動装置や変速装置などの問題ではなく、電子制御に問題があります。
たとえば、私も違う街に行った時にはレンタカーを借りることがありますが、BMWやヒュンダイとか……、するとどうやって給油したらいいのか、どうやったらドアが開くのかわからないとパニックになりますよね。
ですから今の新しいクルマの問題は電子制御にあります。
使ったことがないとわからないからです。

写真

Paris / France

それから、感触や匂いも重要です。
いろいろな感覚すべてに満足のいくものでなければなりません。
それから、美的な感覚も重要です。
それは外側だけではなく、内側も同じです。
技術の様々な機能性を優先してしまって、人間がそれに適応するというものではいけないと思います。
そういう問題はエンジニアと医学的な心理学の専門家が一緒になって解決することが出来ます。

そして大きな問題になっているのは、高齢化です。
85歳になってもクルマを運転したい人が増えてくることです。
たとえば、20歳の人がクルマを運転する時にはどのくらいの速度がいいのか、あるいは私は今70歳ですし、同僚は85歳ですが、そうした年齢ではどのぐらいの速度がいいのか、それぞれに違うわけです。
今、日本でもそうでしょうし、ドイツでも議論されているのは、ある年齢になったらクルマの運転をさせなくするとか、免許更新の際に間隔を短くした状態でテストをさせるとか、そういったことがありますが、高齢化社会だからこそ、技術的な支援、技術で支援すればよいのではないかと思います。
まだたくさん方法はありますけれども。