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『2030 年までの10年で交通事故死者数半減』
第3回Road Safety 世界閣僚会議で宣言。

2020年2月19〜20日に第3回Road Safety世界閣僚会議がストックホルで開催された。会議では、2011年から2020年までのDecade of Action for Road Safetyの総括と、2030年までの次の10年に向けた新たな目標への議論がなされ、加盟各国と共有された。2030年へ向けてのグローバルRoad Safety目標は、もちろん2021年の交通事故死者数を半減させることである。加盟各国を代表して、スウェーデンインフラ大臣トーマス・エネロスよりストックホルム宣言が発せられ、また目標達成に向けた数々の施策もこの2日間の会議の中で発表された。


メイン会場会議風景


主な出席者の集合写真撮影

メインイベント

2020年2月19〜20日に第3回Road Safety世界閣僚会議がストックホルで開催された。主催は世界保健機関(WHO)とスウェーデン政府の共催。世界140か国から交通関係の大臣・副大臣およびその代表団、国際機関、そしてRoad Safetyに関わる産業界および研究機関の関係者1,700人余りが集まった。世界閣僚会議で議論するRoad Safetyは緊急の課題で、毎年135万人が道路上で亡くなっている。これは、毎日約3,700人が交通事故で命を落としていることになる。交通事故は、実は世界の若者の死因の中で最も多いものになっている。そしてWHOは、交通事故が世界で5番目に多い死因になると予測している。

2030年までのこの課題を多くの加盟国が取り組む中、スウェーデンは最も解決に近づいている国である。スウェーデンは、1980年代に彼らが創り上げたVision Zeroの目標を掲げRoad Safetyに取り組み、2015年の調査では国内の交通事故で亡くなった人の数はスウェーデン全土でわずか263名、10万人あたり2.8人という驚くべき数字を記録しており、世界一交通事故死者数の割合が少ない国の一つとしても知られている。因みに世界の交通事故の死者数は10万人あたり平均17.4人となっている。

最初のRoad Safety世界閣僚会議はDecade of Action for Road Safety2011-2020を睨んで2009年にモスクワで開催され、ロシア連邦政府によるモスクワ宣言で始まった。次の第2回Road Safety世界閣僚会議は2015年にブラジリアで開催され、ブラジル政府のブラジリア宣言が発せられた。そして昨年の国連総会で、Vision Zeroの発案国スウェーデンがホスト国に指名され、第3回Road Safety世界閣僚会議の開催が決まった。

第3回Road Safety世界閣僚会議は、初日19日にまずスウェーデン国王カール16世グスタフのスピーチで始まり、同日にスウェーデンインフラ大臣トーマス・エネロスよりストックホルム宣言が発せられた。

トーマス・エネロスはその中で
「私たちは共通の責任を認識し、2020年から2030年までに少なくとも50%の交通事故死を減らすために加盟国に呼びかけます。そのためには、土地利用、道路設計、輸送システム(交通安全システム含む)の構築及び管理の総合的な視点が必要です。私たちには実績があり、毎年100,000人の命を救うことができる交通安全対策があります。」
と表明した。


スウェーデン国王カール16世グスタフ


スウェーデンインフラ大臣トーマス・エネロス

20日のパラレルセッションは以下の18テーマで行われた。

  • 持続可能な都市とコミュニティの推進
  • 交通安全のための新技術の開発
  • 適正な労働条件の確保
  • 子どもと青少年の保護
  • 責任ある生産と消費
  • 効果的で説明責任の有する機関の開発
  • 交通安全ソリューションへの公平性とジェンダーの視点の確保
  • 交通安全の実装ギャップに対処する
  • 交通安全による気候変動の緩和
  • 交通安全のための意思決定のトリガー
  • アクティブな道路利用者の安全を確保する
  • 二輪車の安全性に対処する
  • 安全な速度の利点を享受する
  • 交通安全の管理
  • 安全のための道路の設計
  • 安全な車両と車両フリートの確保
  • すべての道路利用者の行動の改善
  • クラッシュ後の応答の強化

パラレルセッション風景
パラレルセッション風景

会場には様々な国や機関の方々が来場され、交通安全のための世界青年会議(The World Youth Assembly for Road Safety)のメンバーのような若い世代も多く見受けら れた。
2030年までに交通事故死者数半減を目指す方向性を共有し、思いを一つにするという会議としては充分な内容と演出であった。一方セッション会場外では来場者とスピーカーや主催者などが大いに議論し交流していた。


The World Youth Assembly for Road Safety のメンバー


セッション会場以外でも様々な議論が行われた

残念なことは、加盟国である日本からのRoad Safetyに関わる産業界および研究機関関係の参加者の少なさだ。

『2030年に交通事故死者数を半減させる』グローバルRoad Safety目標に向けた「ストックホルム宣言」、目標達成のための施策が書かれた「Global Road SafetyPerformance Targets」「2030年目標実現に向けての推奨事項」、各パラレルセッションでのプレゼンテーションの内容など日本のRoad Safetyに関わる産業界および研究機関関係者にどれだけ情報が共有され、2030年に向けての共同歩調が取れるのだろうか。

スウェーデンのように世界の一員としてこの目標のために共に進むのなら、当然日本においても官民あげ、国民も巻き込んだVision Zeroのような活動が必要性である。そのためには、まずこういう場に参加して情報や方向性、そして目標を共有することが重要だろう。

プレイベント

メインイベントの前日には3件の重要なプレイベントが開かれた。

Road Map for Safer Vehicle 2030(主催 Global NCAP)

Global NCAPが2030年に向けASEAN NCAP・Latin NCAPはもとより、新たに力を入れていくSafer Car for Africa・Safer Car for India・Safer Car for Middle Eastのロードマップがプレゼンテーションされた。それはより安全な自動車を目指すために、世界の事故実態と安全装備の実装状況踏まえて論理的に説明された。

またGlobal NCAPによって、ストックホルム中央駅中央広場に、日産の同車種のピックアップトラックをクラッシュテストさせた自動車が展示された。
これは2015年のヨーロッパ販売の中古車と2019年のアフリカ販売の新車である。 同車格モデルにも関わらず、2015年ヨーロッパモデル中古車の方が2019年アフリカモデルの新車よりも、衝突時の安全性が確保されているという皮肉な結果となっている。これは自動車メーカーの意思と責任を示唆する象徴的な展示となっていた。


スットクホルム駅中央広場日産 NP300


会場風景

Safe and Healthy Journeys for Childe and Youth(主催 FIA Foundation)

世界の若者の死因の中で交通事故は最も多い死因にとなっている。 第3回交通安全世界閣僚会議に先立ち、この事前イベントは、子供と青少年の交通事故政策とその資金提供の在り方や若者を保護するための実証済みのシステムと都市デザインの解決策について議論された。


会場風景

Safe Trips from Door to Door in the Sustainable Society(主催 Autoliv)

スウェーデンの世界的な安全装備メーカーのオートリブでは、今回の第3回Road Safety世界閣僚会議に協力し、プレイベントでは新しい技術の提案を行った。
特にASEANやLatinも含めた二輪車の市場が大きい地域において、将来に向けて衝突時の安全性を高めるため対二輪車用エアバックなどの技術提案を行った。


会場風景

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