小川和久(前編)
New York City / USA
世界市場に対しての日本の問題についてはいかがお考えですか。
私は一般人の立場で眺めています。
海運、陸上輸送、鉄道、あらゆる交通の分野において、日本のセキュリティ意識は世界に通用しないレベルだと感じています。
さる有名な会社のトップが、警察庁トップや官僚まで呼んでの内覧で、最先端の監視技術があるといって見せてくれたことがあります。
彼らは「自殺しようとしている人が新幹線の線路を歩いている。そして新幹線に轢かれると同時に二つに裂けて、在来線まで飛んでいく、それがはっきり見える」と得意げに話していました。
しかし、これはリスク管理上、大問題であって、自殺者でなく、もし自爆テロだったらどうなっていたでしょう。
その発想が全くない。
私は彼らを見ていて自己満足だと感じました。
必要なのは監視カメラだけでなく、センサーに連動した侵入を撃退するシステムであり、もし障害物を置かれたら遠隔操作で取り除くシステムでしょう。
それぞれのシステムを組み合わせれば簡単にできることです。
それを彼らに言うと、取締役からトップにまで話してみるからとなりました。
数ヵ月後、彼らから「そんなものは3年も前から開発している」との返事。
彼らは3年も経って技術が完成していないことは開発の失敗だということを全く認識していないのです。
できるのに、やっていない。
もし、その技術が中国、アメリカ、ロシアなどに先に採用されたら、おそらく逆輸入で日本へ入ってくることになります。
ロボットの技術がある。遠隔操作の技術がある。リスクを管理する技術がある。
それらは別々の会社のものだが、それを組み合わせれば、すぐにできるのに、日本はそこができていないですね。
今、自動車の世界は、アクティブセーフティが全盛です。それまではパッシブセーフティが中心でした。車間距離制御や夜間走行時の情報システムなどですが、これらは危機管理の面からはどうでしょうか。
技術で逃げようとしていて、基本が押さえられているかどうかで違いが出ると思います。
ドライバーが疲れを感じないクルマの設計思想でなくてはなりません。視界の確保も必要です。
ハンドル操作において最も効率的な回避ができる自動車でなくてはなりません。
そうした基本を押さえた上で現在の技術があるならよいが、それをおざなりにしたまま、センサー技術だけでやろうとするのはまずい。
その点においては、残念ながらドイツのメーカーに並ぶ会社はないと考えます。
疲れを感じさせないという人間工学の面から見て、私はベンツのミディアムクラスが一番楽ですね。