小川和久(前編)
London / UK
2030年にオイルピークを迎えるということで、例えばサウジアラビアは太陽光発電へと向かっています。エネルギー問題についてはいかがお考えですか。
湾岸諸国は太陽光だけでなく、原子力に走っている面もあります。
原子力に突っ走ると、原子力発電の技術を持っている国、核燃料を持っている国などがOPECの代わりになってきます。
その中で、太陽光とそれをめぐる周辺技術において日本のリーダーシップがどれくらい発揮出来るかが問題です。
日本がもし、アメリカのような国だったら、そのもてる技術でもって、もう一度仕切り直すでしょう。
太陽光は日本の知的財産です。それをなぜ、世界に売っていかないのでしょうか。
電事連の幹部と話しをする機会がありましたが、太陽光は相当しんどい、ということを言っていましたね。
特に住宅の場合ですが、15、6年経つと全て変えなくてはならない。
その値段は乗用車を買い替えるほどの値段です。
それに耐えられるかという問題がある。
高齢化し、ローンは終っていても太陽電池パネルを買い替えるのは難しいでしょう。
電池の未来も一般に言われるよりもしんどい部分があるということです。
原子力は廃棄物の問題やテロの問題もあるので、今後、年間数十基を増やしていかねばならないというのは問題ではないですか。
原子力発電は他に比べると経験の蓄積があります。安心感というか安定感があります。
テロについてですが、原子力発電所を暴走させるといったことは世界的なパニックを引き起こすことはできるでしょうが、多くの人を死に至らしめるねらいなら、原子力発電所は攻撃しません。
もし12時間電気が止まると、人口密集地域では5桁の死者が出ます。
何万人という数字です。
生命維持装置や人工透析の関係は全部アウトになります。
病院は3時間程度の自家発電装置の燃料しか持っていないからです。
東京都内の電力網は、テロリスト一人でも1時間以内に全部切断できます。
電気会社の社員が復旧作業をできなくするのも簡単です。
ですから、テロリストはわざわざ危険を冒して原子力を狙わないでしょう。
目的によってテロの標的も違うということです。
太陽光発電にも同じリスクがあり、スマートグリッドになっても何らかの切断方法があります。
ましてや太陽光パネルなら、中古の飛行機を持ってきて住宅密集地に突っ込めばいい。
しかし、原発の方は中古の飛行機が突っ込んだくらいでは壊れない。
違う角度から見ていくと、原子力のほうが安定感があるといえます。
しかし、原子力エネルギーを人間の知恵でコントロールし、廃棄物をどうするか、その問題は残ります。
日本の原発技術は進んでいますか。
どうでしょうか。これは今度原子力委員会の委員長代理になった鈴木達治朗東大教授の世界ですね。
トップレベルの専門家は日本の原子力はセキュリティの面ですごく遅れているとはっきり言っています。
取組みが遅れているというより、どのレベルでやるかの知識がないのです。
テロについて言えば、人を殺そうとするなら別に原発に照準を合わせる必要はありません。
しかしパニックを起こそうとするなら、原発でやればそう難しくはないのです。
アメリカのテストでは9分で、インターネットから入り、コントロール不能にすることができました。
しかし日本には、そういったテストベッドすらありませんね。