Sustainability talk 13 久保田秀暢(後編)

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Bad Homburg / Germany

確かにそうですね。中国に突っ走られると日本も困りますよね。

しかし一方で、(基準調和フォーラムでは)日本は1票しかなく、ヨーロッパは27票持っているわけですが、日本が反対したアイテムに対してはヨーロッパはデリケートですよ。

デリケートというと?

日本が賛成出来ないとした場合に、ヨーロッパは27票の強権を使って採択するというようなことは、現在のところしていません。
日本は重要な国で、以前は日本、アメリカ、ヨーロッパの3極、現在は日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、最近ではインドという世界の5極のひとつで、それを無視するのはデモクラティックではないと彼らは言い方をします。しかし個人的には、本音は別のところにもあると思っています。

というのは、そうした日本への配慮の仕方や会議の流れを中国やインドなどが見ているわけです。
欧州は、中国やインドがこの協定に入るまでは日本に対してそうした配慮をするのだと思います。
入った瞬間に日本は「はいさよなら」ということになるかもしれないと僕は思っています。
今はまだ、日本が何かのアイテムに反対すると、非常にデリケートに扱いますね。
まずは日本を説得しようとしますし、あまり重要でないアイテムでも、日本が反対するのであれば、次回に見送って修正案を考えてくるとか。
日本は1票の国だけど、そうした対応をしています。

それはEVの話に限らずですか。

EVに限らずです。
というか、EVはどちらかというと順調にいっていますから、それほどもめるアイテムはありません。

日本への配慮は異常ですか?

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Stockholm / Sweden

僕から見るとある意味そうですね。
欧州から見た場合、今や輸出の対象として、日本よりも重要な国が多くあるはずですが。
日本には、日本にはその重要性以上に痒いところに手が届くというような対応をしていることが多いと思います。
つまり、日本が重要な位置を占めていないとは思わないですけど、それ以上の対応をされていると僕は思います。
だから、、もし中国などが58年協定に参加しても完全に無視されることはないとは思いますが、今のように手厚い、厚遇な対応をヨーロッパ勢がするとは期待しない方が良いと思います。

(中国やインドが)横目で見ているのを知っているから、日本に手厚いという感じですよね。
APECなどで自動車の基準関係のフォーラムなどをやっているみたいですが、自動車基準認証分野では基本的には大きな進展はありません。
というのもそうした議論を出来る国が少ないからです。
しかし、そういう動きをしているということだけで、ヨーロッパ勢は気になるわけです、中身はどうあれ。
それぐらい、自分たちがやっていることに対する危機感が非常に強いということでしょう。
先ほど言ったように業界からの突き上げもあるでしょうし。

このような流れの中で相対的に、今のジュネーブでの動きが世界から見ると魅力のないものになってきているのではないかと危惧しています。
自分が住んでいてそう言うのも何ですが。ここで行なわれている活動は中国やインドにはあまり魅力がないのかもしれません。