Sustainability research 17

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Rome / Italy

現在、教授はどのようなことをなさっているのですか?

更に進めています。
理論的に発表する準備をしています。こういうテーマの研究をするためには、エンジニアの方がオープンな感じで考えることが出来なければなりません。
というのは、自動車は運搬するという機能だけではなく、生活のフォーム、形態だと考えなくてはならないからです。

現在、人間はクルマに乗っている時間が非常に長い。1日1〜2時間乗っていることになります。
そうなると人間とクルマが一体となり、ひとつのユニットとなっている、道具としてではなく自分の一部になっているということです。
その次に重要になるのは、クルマの中、内装ですね。
これは普通はデザイナーが中心になっています。ということは、実際の使いやすさではなく、デザインが中心になってしまっているのです。

クルマのコックピットにはあまりにも情報が多すぎます。
私もクルマに乗っていますが、たくさんのボタンがあります。
しかし実際に一度に操作出来るのは、3つか4つぐらいです。
メルセデスに聞いたところでは、600ぐらいの情報があるので、かなり情報をなくしたそうです。というのは、人間がほとんど使わないものが入っていたからということです。
ということは、エンジニアの人が出来ることが必ずしも人間が必要としていることではないのです。

たとえば、BMWなどにも様々な機能がありますが、裏側には更に100ぐらいの機能があります。しかし1人の人間がそれほど多くの機能を使うことは出来ないのです。
情報処理の中で我々が提案していることは、ヒエラルキーを作るということです。
一番表面に出ていることは簡単に出来て、非常に操作しやすくする。
また、技術が好きな人は次のヒエラルキーで機能させる。
最初の段階では操作が簡単でなければなりません。
そうした段階をつけるということです。

またたとえば、クルマが走っている状況によっても変えなくてはなりません。
ストップ&ゴーで都心を走っているのか、高速道路を走っているのかによって、使う機能も変わってくるのです。
我々人間の生活している空間、時間というもの、人間が幸福に感じられる、安全に感じられる空間、時間。
技術はその背面になければならない。表面に出てくるものではないのです。
現在、自動車業界でも問題になっているのは、安全性ですよね。特に疲れた場合の安全性をどうするか。
人間が常に同じレベルで情報処理が出来ている、と考えてはいけないのです。
1日の間には時間によっては、集中出来たり出来なかったりするので、そこを考えなくてはなりません。
たとえば、深夜に走ればまったく違った状況になるわけです。
夜の時間の感じ方は人間には違ってくるのです。すると時速を誤ってしまう。
ですから非常に疲れた場合には、休憩をするようにとシグナルが出るようにしなければならないわけです。
新しいコンピューターの情報処理によってそうしたことも可能になります。

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Washington D.C. / USA

現在、自動車メーカーのテストの傾向としては、ひとつの機能だけを測定するということがあります。
たとえば、目で見ることだけを測定するなどです。
まだ実現されてはいませんが、私が提案するのは、5つの様々な機能を同時に測定するということ。
そしてそれを統合することによって、「99%以上の確立で、今、このドライバーに問題が起きている」ということを認知することに利用しなければならない。
たとえば、ハンドルをどのくらいの強さで握っているかということがあります。
現在すでに開発したセンサーがあって、血液の中を見ることによって、どのくらいの動き、力が加わっているのか、疲労が出てきているのかということを計測するもので、これはある企業と開発をしています。
あとはシートベルトで、心臓の鼓動や呼吸を計ることが出来ます。
心臓の鼓動と呼吸の比率が3:4ぐらいになると危険な状況になるのです。
ですから、朝に事故が起きるのは、まだ内臓がきちんと動いていない時だから起こるのです。
そうした関係から危険な状態を測定することが可能になります。

あとはカメラによって目の動きを常に測るということです。
疲れてくると目は上のほうに上がってくるのです。
それからもし本当にやるとなったら、帽子をかぶせて、脳波を測定することです。
今言った機能をすべて測定すれば、ほぼ100%に近い確立で、このドライバーはあと3秒ほどで危険な状況になると予測することが可能になります。
今こうしてお話ししているのは、エンジニアには、こうした神経面や心理学面、知覚の面からの知識がないからです。ですから、日本のカーメーカーと共同研究をすることで、エンジニアにこうした知識を与えることが出来るのは非常にうれしいことです。
自動車業界だけでなく、他の業界でも脳や心理学の研究の知識が十分に活かされていないと思います。
たとえば飛行機や、船舶、原子力の監視などについてです。