Sustainability research 17

今は、自動車やドライバーのお話をうかがっていましたが、
交通の中には大きな要素が3つあって、一方で運転者と歩行者がいるわけで、
その歩行者に対して医療心理学からのアプローチはあるのでしょうか?
三つ目は、道作りや街づくりで、信号のつけ方や、カーブの作り方、高速と一般道の関係、時速制限の区域の設定などにおいて、医療心理学、脳医学の面から寄与することはあるのでしょうか?

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London / UK

すでに様々なプロジェクトがありますが、先程も言ったように、人間は2秒3秒先を目標に見ているわけです。
高速道路にカーブを作る場合どのようにカーブに適応させるのか、また速度を適応させるのかということを脳の流れということを考えて作ることが出来ます。
今お尋ねになったことは街づくりの根本的な重要なことなのですが、現在は交通の流れをいかに良くするかということばかり考えられてしまっています。

また、歩行者と共に自転車が非常に大きな問題になっています。
歩行者、自転車、クルマのドライバーがそれぞれを尊重しあう関係を作らなければなりません。
そういう意味でも街づくりは街の美化というだけの問題ではありません。
自動車産業だけでなく、行政の調整が必要になってくるのです。
これからエンジニアの方がこうした空間を設計されるためには、本に書かれた知識だけではダメなのです。
それは、脳研究、医学的心理学での知識を知らなければなりません。

ただ単に交通の流れをいかにうまく機能させるかということだけではなく、美的なもの、映像的なもの、直感的なもの、そして人間がいかに快く動き回れるか、つまり内面的な感覚をいかに快いものに出来るか、そういうことを考えなければなりません。
私はドバイの教育省の顧問もしていますが、そこのロジスティックの担当者とも話をしています。
ドイツのロジスティックのこともいろいろと調べましたが、街づくりには交通の流れだけを考えるのではなく、いかに人間が幸福を感じられるかそれが非常に大切です。
まず、交通は景観に合わなければなりません。これは結構よく出来ています。
しかし都市の中の交通はひどい状況にあります。
その中でもひどいのはフランクフルトとケルンです。バーゼルはもっとひどいです。
ベルリンは結構いいです。
東京は私は好きですが、京都とはまったく違いますよね。

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London / UK

建築家やデザイナーとも話し合いをしていますが、このビルにセンターがあります。
私が作った人間科学センターです。
世界各国から集まった80人の科学者がいます。
その中の1人はテクニカルデザインの設計家です。フォルクスワーゲンのためにガラスの建物を作った建築家です。
北京にも大きな博物館を作っています。
建築家も脳の認知を如何に有効に使うかということを考えなければなりません。
私は医学的心理学の教授ですが、このヒューマン・サイエンス・センター、人間科学センターの所長でもあります。
どのようにこのセンターが機能しているかと言いますと、ここはパブリック・ドメイン、ここはプライベート・ドメイン、ここはベーシック・リサーチ、ここは応用と。
ここには80人の専門家がいますが、学術界からと産業界からも来ています。
ですから、産業界との連携の上でも重要なネットワークになっています。
ここには産業界からも入っています。中心はドイツからの会員ですが、日本や中国、韓国、アメリカ、ロシア、ポーランド、オランダの人もいます。とてもインターナショナルです。
我々の知っている知識を様々な連携のためにも利用してもらおうとしています。

大学はいろいろな大学があります。
私は北京大学の教授もしていますし、日本では、東京工業大学の三宅教授、チューリッヒ大などもありますし、もっとたくさんあります。本も出版しています。
日本とのコーオペレーションは、このヒューマン・サイエンス・センターを通して行なっています。
これは高齢者がテーマになっています。世代研究プログラムです。
今日私が何度も言っていたのはこれです。
人間が機械に順応するのではなく、機械が人間に順応するのです。
ここから50kmほど南にあるバーツルーズという場所でこの実験を行なっています。大きな領域ですが、住居、建物や街づくりについてはこのヒューマン・サイエンス・センターで行ないます。

ですから先程の話の街づくり、周辺のデザインの研究についてはドイツ政府やEUから資金が出ています。
生活の資質、技術だけでなく、人間の内面的な感覚について、技術があり、そして人間の内面があり、それが一緒になってはじめて成り立つということです。