Sustainability talk 14

今、日本中が「原発アレルギー」を発症している状況ですね。

ええ、しかしそれは仕方がないでしょう。
あれだけの大きな事故(福島第一原発事故)が起きたのですから。
事故をきちっと収束させないと、誰も信用してくれないでしょう。

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「事故収束に全力を挙げる」、また「除染をやる」と細野豪志原発事故担当大臣をはじめ政府は言っています。
これは正しいですね。
放射能について情報を提供し、きれいにする(除染する)ことができないと誰も信用してくれません。
まず最初にやるべきことです。
従って今、政府がそれに全力を挙げると言っていることは正しいと思います。
しかし、だからといって「原発はリスクが高い。
恐いから止める」というのは非常に短絡的な議論です。
国内だけでなく、世界をもっと見てから議論を進めたほうがいい。

ドイツは昔からフェイドアウトすると言っていましたが、それをいったん棚上げにしました、それを元に戻すということなのです(2002年シュレーダー政権下で原発を段階的に減らし2034年までに全廃する決定→2022年までに原発を閉鎖する)。
イタリアは止めるという決定をしましたが、もともとやっていないわけです(1986年チェルノブイリ事故以降、原子炉を順次閉鎖→国民投票で再開凍結を決定)。

スイスは現在5基しか原発がありませんが、原発を今後順次止めるという決定を出しました。
しかし20年間かけて考えるという決定です(9月28日→2034年までに国内原発を廃止→10月5日、2034年までに段階的に脱原発)。スイスは、セキュリティについては非常にセンシティブな国です。
たとえば小麦粉を備蓄して、それでつくるパンがまずくても、安全上必要だと考える国です。
そうした国が、原子力が危険だからと言ってぽいと止めることはないだろうと思います。
ガスも石炭もやめて、風力や水力だけでやれるとはとても思えません。

北欧でもフィンランド、スウェーデンは原発を有していますが、今後も続けると言っていますし、東欧に至っては増やすと言っています。
なぜなら東欧諸国はロシアにガスや石油を依存しており、ロシア依存を減らすために原子力を持つという選択をしているのです。

またポーランドやチェコは石炭を利用しますが、EU域内のルールで二酸化炭素排出量を減らしていかなくてはならないので原子力を使わざるを得ないのです。
従ってポーランドやチェコ、ハンガリーなど東欧の国々は原子力を増やしていくのです。

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ヨーロッパにはこのような状況があり、必ずしも「ヨーロッパの国々は全て反原発になった」という認識は事実ではありません。
OECD全体としては、減らす国がありますので差し引けば増えないとしても、現在よりも大幅に減ることはありません。

またインド、中国、ロシアそして韓国の4つの国々については、今後新設される原発の8割がこの地域にあります。
これらの国々は、日本の隣ですね。
これらの国がどんどん原発建設している一方で、日本から「安全に運転してください」と言うだけでは恐くて仕方ないですね。
ですから、日本が今回の福島の事故を解決してより安全な技術運転、規則のあり方を確立すれば良いのです。

原子力発電はより安全になるに違いないのです。
古い炉はリプレイスして、より新しく安全なものに切り替えることが必要です。
それをやるのが日本の世界への貢献です。
世界が今、日本に求めているのは、原発を止めるということではないというのが私の見解です。