Sustainability talk 12 久保田秀暢(前編)

ここでこういうものが採択されるというのは、ECの基準ですか?

ECE(欧州経済委員会)の基準です。

写真

Paris / France

北米などはまた別ですか?

このハイブリッド車に関する提案は、北米は関係ありません。
WP29という欧州経済委員会の中にいわゆるEC規則というものがあって、北米・中国・インドが締約国になっていない、日本と主に欧州だけが締約国になっているEC規則を決めるのと、もうひとつ、北米・中国・インドも締約国に含まれるGTR(Global Technical Regulation)という協定があります。

ほとんどはEC規則という相互承認前提の規則づくりがほとんどですが、一方で最近は世界的な統一基準だけを決めるGTRという動きもあります。
これは別の協定になっています。
GTRの方もここジュネーブで会議を行ない、日本はJASICが窓口となって会議に出席しています。

今ヨーロッパ、ECEで一番問題になっていることは何でしょうか?

ヨーロッパは3年ほど前にCARS21という、21世紀にむけた自動車業界の競争力をあげるために何をすべきかということをいろいろ書いていますが、その中でGeneral Safety Requirementという、要は一般的な安全基準を優先的に決め、負傷者を減らして、そういう基準を満たすクルマを出すことによって欧州メーカーの競争力を高めようというプログラムを持っているんです。
それに基づいてEC規則の改正提案などをどんどん出してきています。
それは欧州の道路事情を踏まえて「こういう基準がいるよね」ということをやっているのですが、日本の道路事情となかなか合わないこともあって、そういうものについては国連の中で議論を行ないます。

しかし、いかんせん国連の中では3分の2の賛成があると規則改正や新規則が成立してしまいます。
欧州はもともと3分の2の票、40カ国のうちEC27カ国の票を持っているので、彼らは最後にはそうした力技で成立させることもできるのです。
しかし日本は、事前に日本の道路状況や事情を説明するデータを出したり、カウンター・プロポーザルを出したりして、できるだけ欧州だけの事情で規則改正がされないようにしています。
ですからこうしたハイブリッドに関する提案も日本の事情を加味して、日本から率先して基準を出したりしています。
議決権のある3分の2の票を持っている相手に対してどう議論をしていくのかということが大きいですよね。

では今、日本と欧州とのギャップで問題になっている具体的なものはどのようなことですか?

写真

Bad Homburg / Germany

日本と若干違うなというのは、自動ブレーキですね。
前方の車を検知して自動でブレーキをかけるという。
あれは日本だと日野自動車などの大型車には付けられていて補助金も出していますが。
日本だと自動ブレーキをかけるクルマが後ろから追突されないようにぎりぎりの状況でブレーキをかけて、ぶつかるけれども速度を低減して、死者・重傷者は出さないというような形で基準をつくっているんです

欧州などですと、もう前にぶつからないようにする、ものすごく前からブレーキをかけてもいいのだというようなことでダイムラーなどはつくっていたりするので、じゃあどっちの基準がいいんだとまだ議論しています。

あとは、彼らとけんかするという話ではないですが、前回の2009年11月でもそうですけれども、現在は部品の相互認証だけ行なっていますが、それを車両全体でも相互認証できないか、そういう枠組みを5〜6年かけてつくろうという提案を日本からして、欧州などを説得しているというアイテムはあります。